United Space

UnitedSpacesプロジェクトは、ユビキタス環境の中でも特に屋内環境を想定したユビキタスアプリケーション(サービス)を動作させるためのミドルウェアを研究開発するプロジェクトで、セキュリティ機構、位置情報機構、コンテキストアウェアネス(状況適応)、サービス連携システム、について研究しています。 このプロジェクトは、株式会社内田洋行(以下、内田洋行)と共同で研究を行っています。

内田洋行とは、こうしたミドルウェア(ソフトウェア)の研究開発だけでなく、ソフトウェアが動作するハードウェアについても共同研究をしています。コンピュータ、スピーカ、プロジェクタ、センサなどの様々なデバイスを取り付ける(埋め込む)ことでユビキタス空間を即興的に創り出すSmartPao、即興的なプレゼンテーションを実現するために作られたプロジェクタとマウスのようなユーザインタフェースを埋め込んだコーヒーテーブルである CaffeLatteは、その一例です。こうしたモノは、SmarFunitureと呼ばれています。日常の何の変哲もなくて、でもよく利用される“家具”を賢くすることで、自然な形で現状の家やオフィスに溶け込み、ユビキタス環境を創り出します。

このように、このプロジェクトでは、ソフトウェア、ハードウェアの両面からユビキタス環境を考えています。そしてそれらの成果を研究室に設置して、実際に利用して生活することによって、実用的なシステムを作り出す研究を行なっています。

SmartPao:ピラー(柱)という具材で矢倉上に取り囲み、空間を即興的に作ります。このピラーには、サーバラックやモニタ、スピーカ、コンピュータ、センサなどを取り付けることが可能です。

アンビリカスタワー:3つのモニタと電光掲示板、プロジェクタ、スピーカを備えた情報キオスク端末です。

CaffeLatte:プロジェクタ、コンピュータ無線LANアダプタ、とマウスのようなインタフェースを埋め込んだコーヒーテーブルです。

MicroNode:センサの埋め込まれたライトです。叩いたり、手をかざしたりるすると、ランプの色が変わります。背面にはPDA+無線LANアダプタが埋め込まれているので、遠隔からライトを操作することもできます。

    • ユビキタスシステムのセキュアな連携機構

ユビキタス社会が実現すると、異なる会社のサービス同士をユーザが独自に連携させ、より利便性の高いサービスとして利用したり、各自が管理しているユビキタスシステムを統合して新たなユビキタスシステムとして提供するなど、管理主体の違いという壁を超えてシステム間の連携がセキュアに行なわれることが望まれるでしょう。しかし、現在は管理主体ごとに異なるシステムを利用しているため、実際に管理主体の異なる複数のサービスシステムを連携して動作させた例や、今現在も引き続き連携させている例はごく少数です。この問題は世界中の多くの研究者が取り組んでおり、近い将来解決されると考えられますが、それだけではユビキタス環境における連携が可能にはなるとは考えにくいです。その原因の1 つとして利用者を管理している団体/個人が異なっているにもかかわらず、相互を適切な権限を用いて/制限してセキュアに利用するための機構が整っていない事が挙げられます。 そこで我々は上記の問題を解決するため、異主体間の連携を想定したユビキタス空間構築システム「UntiedSpaces」の開発を行っています。

    • コンテキストアウェアコンピューティング

この研究は、ユーザの状況や状態(コンテキスト)を認識し、それに対応したサービスを提供することを目標としています。ユビキタス環境では多種多様なサービスがユーザに提供されるようになる反面、その膨大なサービス群から、ユーザはユーザ自身にとって有用なサービスを見つけ出すことが困難となってしまうと考えられます。しかし、遍在する計算機が正確にユーザのコンテキストを認識することができるのであれば、ユーザのコンテキストに適切なサービスの掲示、提供が可能になり、しいてはユーザがサービスを受けるまでの複雑なプロセス意識せずともサービスを利用することができるようになるでしょう。 従来の研究では、各種センサを用いて取得する情報を元にユーザのコンテキストを導出するものが大半でした。しかしセンサでは低レベルな情報しか認識できず、「人がいる」「話をしている」ということは分かっても、「会議をしている」と言うような、より抽象度の高いコンテキストを導出することは困難です。 我々はこうした現状から、コンテキスト認識のために、センサだけを利用するのではなく、ユーザが教えられることは教えてあげればよい、というコンセプトのもと、ユーザがコンテキストを提供することのできるシステムを研究しています。しかしユーザがコンテキストを教えるという行為は、よけいユーザを大変にさせているだけであると考えられるかもしれません。ですが実は既にユーザは日常生活の中で未来のコンテキストに当たる情報を記述しているのです。それはメールです。メールでは、「次の会議を行います。そしてそのために資料を作って、発表して・・・」といったように未来のコンテキストについて記述されています。こうした記述を我々の拡張したメーラやメールシステムを利用することで容易にマシンリーダブルにできるようにし、それをコンテキスト認識に利用することを考えています。 このシステムが実現することで、ただコンテキストアウェアなサービスを提示・提供することだけでなく、次世代のコラボレーションツールやグループウェアとして利用することもできるようになるでしょう。

    • 合成サービスのフレームワーク

ユビキタス環境では、多種多様なサービスがネットワークを通じて利用可能となることが予想されます。しかし、それらのサービスはそれぞれが独立しているため、機器ごとの機能しか提供することができません。真にユーザの要求に沿うためには、それらのサービスを連係動作させる合成サービスが必要となるでしょう。 我々の研究している「穴あきサービスフレームワーク」は、別のサービスを取得して機能を提供する「穴あきサービス」の開発支援をするためのフレームワークです。穴あきサービスは、サービス取得条件を定義した「穴」に動的にサービスを埋め込むことができます。ユーザはこの構造を持つ穴あきサービスにより、時や環境、嗜好に応じて、柔軟に合成サービスを得ることができます。我々はこのように、ユーザの要求を満たし、嗜好に沿う合成サービスを得るための研究をしています。