センシングとは?
私たちの身の回りにはたくさんのセンサが存在している。例えば、多くの人が利用しているスマートフォンやワイヤレスイヤホン、スマートウォッチなどのデバイスには、多様なセンサが搭載されている。それらのセンサを利用して様々な情報を取得し、その中から有用な情報をマイニングし活用する。(※太字はこの研究室で主に利用しているセンサ)
地磁気データの信頼性評価に基く方位較正手法
本研究の主目的は屋内環境における正確な進行方向推定技術の開発である。ジャイロスコープは短期間において高い精度を持つが、長時間使用すると累積誤差が生じるという課題がある。一方、地磁気センサはジャイロスコープの累積誤差を補正するために利用されるが、屋内環境では鉄骨構造や電子機器などによる磁気外乱の影響を受けやすく、測定値が不安定になる問題がある。そこで、直進中の地磁気データの分散を評価することで磁気外乱の有無を判断し、適切なキャリブレーションを行う方法を提案した。
イヤラブルデバイスを用いた購買行動分析
本研究では、身近なデバイスに搭載されたセンサを活用して買い物客がどのような動作をしているかを判別することを目的としている。先行研究では、スマートフォンのセンサのみを用いて買い物客の行動を「移動」「検索」(歩行しながら商品を探している)「観察」(立ち止まって商品を探している)の3状態に分類している。本研究ではさらに踏み込み、「観察」状態だけでも特定の商品を注視しているのか、棚全体を見回しているのかなどの状態に細分化することで購買意欲の高まりや、商品選択時の迷いなどの把握につながる分析が可能である。そこで、頭部動作情報を活用する。近年「AirPods」のようなイヤラブルデバイスには、加速度センサやジャイロセンサが搭載されており、頭部動作の情報を取得することができる。これをうまく活用することで、スマートフォンのみでは「立ち止まっている」情報しか得られない場合でも、イヤラブルデバイスでは「商品棚を探索している」といった情報まで判別可能となる。本研究はLINEヤフー株式会社、東京大学、東京科学大学との共同研究である。
PDR精度向上のための歩行分析
機械学習の発展によって、多段の処理が必要であった従来のPDRに代わり、一つの深層学習モデルで位置を推定する PDRが提案されている。この深層学習PDRは加速度と角速度センサの値をモデルに入力すると、移動距離と進行方向を 出力して位置を推定する。しかし、従来手法は入力時系列の区切り方が機械的(時間単位または歩単位)であるため、人間 の歩行特性を活かせていないと私たちは考える。そこで、人の歩行と関連付けてセンサデータを歩より細かく区切り、 LSTM(長期的特徴と短期的特徴を学習可能)を使用して深層学習で学習する手法を行った。さらに入力時系列の切り方に2つの手法を併用したとき現状最高性能と言われていたRoNIN(Robust neural inertial navigation)よりも高い精度で位置推定を可能とした。今後は歩単位ウィンドウで区切るための歩認識の精度向上を計ることでより精度の高い位置推定精度を目指す。
複数のLiDARを使用した骨格推定精度の向上
PDRの精度向上のために用いられる機械学習は移動距離の推定、進行方向の正解データが必要となる。そこで本研究では、複数のLiDARを使用し骨格推定精度を向上させ、機械学習の教師データに利用できる正確な歩幅の計測手法を提案する。LiDARの点群データをもとに骨格を認識するとで、歩幅の推定が可能となる。しかし、単体のLiDARで収集した点群データからでは骨格推定の精度不良が発生する。そこで、各LiDARの精度不良を判定し,適切な座標を取得できているLiDARの組み合わせを選択する手法を提案する。今後は実験で得られた歩幅の精度が歩幅を推定する機械学習に十分であるかを検証し、必要であれば更に向上させることを目指す。